姫、私は誓います。
かといってウィルの話をしたらしたで互いに辛くなるだけだ。俺とレンを繋いでいたのはウィルの存在だけだった。ずっとウィルがそこにいる。ただそれだけで繋がっている事が出来た。でも、それももう見失ってしまったさ。ウィルがいない。ただそれだけで何をどうしたら笑ってくれるのか、何をどうしたら喜んでくれるのか。何をして楽しんでいたのかも分からなくなってしまったんだ。
ギクシャクしたこの関係を改善したくて口を開くものの、出てくるのは突き放すような八つ当りしているような言葉だけ。その言葉に苛立ってレンも言い返してくるから更に俺も言ってしまう。まるでいたちごっこさ。
俺には父親になる資格なんて無かったんじゃないかとも思えてくる。どうして息子の事すら分からないんだって情けなくて本当に俺は、一人では何も出来ないんだと思い知らされる。それでもレンが俺を父親として接してくれているのは、ウィルの優しい所を受け継いだからなのだろう。俺の血を完全に受け継いでいたのなら、ウィルの亡くなった時点で縁を切っていたはずだ。
< 263 / 270 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop