姫、私は誓います。
「やめろ、お前が行ってどうにかなる問題じゃない。・・・今は待つんだ」

どこかへ行こうとするラークをひき止めるルークの目には姫の悲しむ顔が浮かんでいた。こんなにも愛されている人が亡くなって良いはずがない。いや、違う。私はただ、愛している人が亡くなってほしくないだけなんだ。ただそれだけで焦っている。医師としては情けない事だろう。でも、今くらいは医師という事を忘れて姫のそばにいたい。一人の人間として心配していたい。

「姫様、私と最初に会った時もこうやって眠っておられましたね。確か・・・母を助けようとしたとか」

私は目を覚ましてほしいという意を込めて、思い出話を語りかけた。何としてでも生かせたい。でも出来る事はもうない。後は彼女の力を信じるしかない。それならせめて、役に立たなくても思い出を語りたい。また生きたいという活力になるかもしれないからだ。
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