姫、私は誓います。
「あなたはこうして生きてくださいました。でも、私はあなたの前で母を助けられなかった事をまだ悔やんでおります。過ぎた事だと笑ってはくださいますが、お辛いのでしょう?夜な夜な、すすり泣く声が聞こえておりました」

出入口のそばにいたルークとラークがやっと姫のそばまで来てくれた。毒消しを取って戻ってきてからというもの、二人は姫に一歩も近づこうとしていなかったんだ。


「あなたはどうしてそこまで頑張られるのですか?・・・もう、ご自分のために生きてよろしいのではないでしょうか」

手を握っていると、いつか握り返してくれそうで離せなかった。生きようとする気持ちが伝わって来ないのは分かっていた。でも、信じないでしょう。好きな人が生きる事を諦めただなんて信じたくないでしょう。姫の指先がまたひんやりとし始めていた。私たちの思いが姫の心までは届かなかったのだ。
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