姫、私は誓います。
「よろしくお願いします」

そう言って走り去っていった彼女に手渡されたのは霊体の母親とまだ肉体の妹だった。自分の家族として一緒に暮らしていた人間だ。彼女は何か間違えている気がする。それは霊体を食する俺にでも分かった。無関係の兵士たちは生かしてほしいのに、愛を一番注いでくれているはずの家族は簡単に差し出せる。
彼女の考えている事は分からない。そもそも、植物の考えを分かろうと思う事自体間違っているのかもしれない。ただ、一応義理でも家族は家族だろう。凛として未来だけを見ようとする彼女に少し寂しさを感じてしまう。
今、実際に彼女の死目にあって思うけれど他の者たちには本当に話していなかったのだろうか。自分が植物であり、魔女に姿を変えられた事を本当に話していなかったのだろうか。それならそれでもっと寂しいだろう。自分や家族の命を差し出してまで守りたかったほど大切な者なのに、本当の事を話せずにいただなんて溜め込んでいる方も知った方も辛いだろう。
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