姫、私は誓います。
「・・・すまないな、会いたい奴がもう一人いるんで帰らせてもらう。・・・でも、これが真実だ」

書斎を出て、俺は樹海へ帰った。ただ、あんな苦しんでいる仲間には言えない。惚れ薬があの娘を好きになった理由なんだって仲間には言えなかった。せめて、苦しんでいる今だけは本当の愛にしてあげたかったんだ。俺がする、最後の償いみたいなものなんだ。それだけは分かってほしい。

「あいつの様子はどうだ」

「変わりはありませぬ、御主人様」

「ランバート・・・?」

あの子の声がする。大切な仲間が愛した者の片割れ、一人の人間の肉体が俺を呼んでいる。俺を家族として愛す一人の女の声がする。仲間に全てを伝えられなかったのは心残りだが、俺にはもう一人だけ真実を伝えなきゃいけない人がいたんだ。彼女の妹にも伝えなきゃいけないんだ。
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