街が赤く染まる頃。ー雨 後 晴ー



とりあえずそのまま帰っても仕方ないから、いつものスーパーへそのまま足を動かした。


たまごLパック 188円
キャベツ一玉 158円
にんじん 三本入り 128円
ティッシュ5箱入り 228円


・・・高ぇ。


嘘だろ?ほんとに?
だってこの前たまご98円だったじゃん。
なんで?月曜日だから?

ティッシュも189円だったじゃん!!


ダメだ、やっぱ日曜日が安いわ。
日曜に出直そ。

……でも、今日はまだ月曜日。
日曜日までは…さすがにもたない。

仕方ない、ちょっと遠いけどあっちの安いって評判のスーパー行ってみるか……


……チャリもねーから本当にきついけど、でも金もないし気合いで頑張るしかねーか。
俺まだ高校生だし。男子高校生だし。
体力には自信もあるし、頑張って歩くか。



そう決め、俺は恐らく徒歩45分くらいかかるスーパーへ、頑張って歩いていた。

バスも電車もあるけど、安いスーパー求めて乗り物に乗るのは本末転倒。
ここは頑張って歩くしかなくて、イヤホンを耳に装着し、音楽に乗りながらサクサクと歩いていった。



━━と、なんとか街を通り越して住宅街にたどり着き、
やっとここまで来た!!なんて思いを押さえつつ、すぐそこのスーパーまで足早になる。

でも、そんな急ぐ俺の足を止める、ひとりの少女。


公園のベンチに座り、空を見上げているのは今日の朝まで俺の彼女をしていた心優だった。


「…っ、」


話しかけよう。そう、思うんだけど……

俺なんか所詮元カレで、振られた俺が学校でもないのに声をかけていいのかもわからず
挙げた手を強く握り潰して下ろし、声をかけようと開けた口も食い縛るように閉じるしかなかった。


正直、学校にいるときは普通に話せたのに
学校を出ただけで、フラれたんだ、終わったんだって言う実感が俺の身を切りつけて

……もう、前みたいに気軽に話しかけられなくなっていた。


「━━大翔?」


…なのに、そんな俺に気づいた心優は、普通に俺に話しかけてきた。
本当に、いつも通り過ぎるくらいに。


「あー、心優。何してんの?」


どうせ家に帰るのが嫌なだけだろうけど。


「私はちょっと……
大翔こそ何してんの?こんな遠くまで、制服で。」


「あー、近所のスーパーのたまごとか野菜が高くて。
あそこのスーパーが激安だから買いに。」


「あはは、主婦みたい。」


「うるせーよ!……あの、さ
暇なら一緒に行かねー?」


超勇気を出して
この俺が、めちゃくちゃ勇気を出して放ったその一言


「あー、ごめん。行けない。」


そんな一言はあっさりと撃沈した。


「……そ、わかった。
じゃーな」


たったそれだけのことなのに泣きそうになって
だけどそんな顔を見られたくなくてすぐに振り返ったんだけど


「……あれ、確か君…」


「……そういうこと」



< 114 / 217 >

この作品をシェア

pagetop