時の歌姫
プロローグ
−−歌姫になりたかった。
なんて言ったら他人は笑うだろうか?

少なくとも彼には言えない。

そんなことを考えていたら、自分でも笑えてきた。


目に映るのは古ぼけたデパートの屋上にある子供向けの遊具。

最近治安の悪くなったこのあたりには親子連れなんか近づかないし、

今日は鬱陶しい霧雨も降っているからなおさら人がいない、


ていうか、ゼロ。


あたしが幼い頃からの夢をあきらめたのは、
そんな寂しい光景の中だった。



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