時の歌姫
「しかし、あんな騒ぎになるとはなあ」

ヤス兄が言うのはもちろんさっきの広場での一件。


「ヤス兄は、参加なんかしてないよね?」

気になってたことを恐る恐る聞いてみた。


「当たり前だろう?」

ヤス兄は、カップを持ったまま、眉間に皺を寄せた。

「あんなことしたら、奴らと一緒になる。
俺は、そんな方法は取らないさ。暴力なんて、な」

「そうだよね」


よかった。

ちょっとだけ心配してたんだ。

ヤス兄は強硬な能力反対主義者だから。


「ミチルは心配性だな。大丈夫だよ。
ほら、仕事に戻れ。あと少しだろ?」

「うん」


いつもみたいに頭をくしゃくしゃ撫でられて、やっと自然に笑顔が出せた。
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