甘いあまいイチゴの香り
「今日冬馬の店、休みだから家にいるよ。おいで。」
そう言うと一馬くんは髪の毛を一撫でしてデスクへと戻っていった。
そっか。今日は月に二回しかない定休日だ。
一馬くんは小さい頃から私が冬馬くんに恋していることを知っている。
というのも、家族みんな知ってる。
そのくらい小さい頃から冬馬くんの後を追いかけてきた。
私がまだ3歳のころ、冬馬くんはもう10歳で小学4年生だった。。
菫ちゃんも冬馬くんと同い年で、私以外の三人がランドセルを背負って小学校に行くのが羨ましくて、寂しくて、
いつも登校する冬馬くんにしがみついていたっけ。
そのたびに優しい冬馬くんは私の頭を撫でて
「桜、学校が終わったらすぐに帰ってくるからいい子で待ってて。そしたらたくさん遊ぼう?」
そう言うといつもいってきますと言ってから、私のオデコにキスをしてくれた。
それが嬉しくて、私だけが特別なんだと思って
毎日毎日、お見送りをしては、いってきますのキスをしてもらっていた。
それは冬馬くんが中学3年生になるまで毎日続いた。
どうして中学3年生までなのかというと、
冬馬くんに私ではない特別な人がいると知ってしまったから。
冬馬くんが15歳、私は8歳の小学2年生だった。