甘いあまいイチゴの香り
私が扉を開けようとすると中から扉が開き、出てきた人と危うくぶつかりそうになった
「あ、さくらさん。お疲れ様です!今帰りですか?
冬馬さんなら中です。今ちょうど菫さんも来てますよ。
じゃあ、俺帰りますね!お疲れ様でした!」
パティシエの笹木くんがいつものように眩い笑顔で帰っていったのを見てから、私はもう一度扉に手をかけた。
菫ちゃんも来てるんだ。
何だろう。
何か心がザワザワする。
女の勘?第六感??
入ったらダメだと、心が言ってる気がする。
でも、震える手が開けろと言わんばかりに身体が動く。
そっと扉を開けて、音を立てないように後ろ手で閉めると
足音を立てないように奥へと進んだ。
明かりが漏れているのはスタッフが休憩に使ったりする事務所で、小さく話し声が聞こえてきて、私はそっと扉に耳を寄せた。
話してる内容はよく分からないけど、所々声を荒げる菫ちゃんの声が聞こえてくる。
少し遠くに聞こえる声にそっと扉を少しだけ開けた。
「冬馬はいつもそう!さくらのことばっかり!
私のことなんでどうでもいいんでしょ!!!!!!」
「何でそこでさくらが出てくるんだよ。関係ないだろ?」
「関係ないわけないじゃない!私に何があっても、冬馬はいつも桜を優先させるじゃない!!!!」
「菫!落ち着けよ!!」
声を荒げている菫ちゃんを抱きしめながら、背中に回した手に力を入れる冬馬くんが、眉をぐっと寄せて暴れようとする菫ちゃんを更に抱き締めた。