夢物語【完】


何年か前、涼介くんに「ママの事を好きにならなかったの?」って聞いたことがあった。
その時はちょうどママとパパも出掛けていていなくて、留守番をしてた時だった。
いつもどおり「ただいまー」って帰ってきて「一人で留守番か?」と話し相手になってくれた。

涼介くんは質問に「まぁなー」と聞きなれた関西弁で答えてくれた。

「そら20年前くらいやったらあったかもしれんけど、なんせ紗生のおとんが許すはずないやん。あいつら出会ったん高校生やで?俺はその後に紹介してもらって初めて知ったけど、なんせナリが怖くてそんな気にもならんかったわー」

あったかもしれないんだ?と突っ込むと「涼、可愛いからな」と答えてくれた。

ママは確かに可愛い。
せっちゃんみたいに綺麗っていうよりかは可愛いママって感じ。
涼介くんから見たら20年前と変わってないって教えてくれた。

「じゃあ、パパと出会うより先に涼介くんがママと出会ってたら、もしかしたら好きになってた?」

そう尋ねると「それはあるな」と即答だった。

「略奪愛は考えなかった?」そう聞くと、「難しい言葉知ってんな」と笑いながら「それはないな」と答えた。

「もうなー、涼がナリのこと好きやってん。ナリは涼のことむっちゃ好きやってん。だから、誰が何しようとこうなってると思うわ」

だから千秋と紗生が生まれてくるのも必然やねん、とも言ってくれた。

ちーにいが生まれた時は少し戸惑ったらしい。
子供に免疫のない自分が可愛いと唯一思える子供に出会ったっていうことが衝撃だったらしい。
そして、あたしが生まれた時は日本一べっぴんさんになるって思ったらしい。
だから、ちーにいとあたしは自分の子供みたいで、周りがみんな子供を産んで家族が増えても自分は全然寂しくないって言った。

「今だってココの家に帰ったら紗生がおるやん。こうやって俺と話してくれるやろ?千秋が帰ってきたらギター教えてくれって言うてくるやん。京平んとこ行ったら杏がなんやかんやって千秋との話を聞かされるやん。悟んとこも凪にギター教えなあかん。中塚さんとこは櫻がおるけど、俺に超懐いてくるやん。その合間は仕事して飯食って寝なあかん。俺って他の誰よりも一番忙しいねん。嫁の相手してる時間あると思うか?」

そう言った涼介くんに「ほんとだね」と笑うと頭を撫でてくれた。
嬉しくて抱きつくと痛いくらいに抱きしめかえされて殴ってやった。

パパとはまた違うポジションの人。
小さい頃は本当に涼介くんと結婚するって言ってたけど、それも可愛い思い出。

涼介くんは慧ちゃんの言うとおり、みんながいるから結婚していなくたって全然寂しくない。
寂しいと感じた時はあたしが相手をしてあげるって決めたから。
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