あなたに呪いを差し上げましょう(短編)
いやです、を両手の指が足りなくなりそうなほど言い張ると、とうとう折れてくれた。


「……わかりました。アンジー、くれぐれもお体にお気をつけて。無理はなさらずに」

「ええ。ところでルークさま、明日はお暇ですか」


まったくもって気をつけなさそうな気配がしたのか、頭をおさえて呻かれてしまった。

ほんとうにくれぐれも無理はしないように、と念を押してから、諦めた顔で返事を寄越す。


「夜でしたら時間があります。明日もこのくらいの時間にお会いしに参ります」

「お待ちしておりますね」

「私も楽しみにしております」


約束をしたところで、ようやくお湯が沸いた。香り高いお茶を淹れていると、後ろ手に隠していたお土産を渡された。


「ささやかですが。いただいてばかりでは申し訳ないので」


クリームと果物がたっぷり使われた菓子は、素っ気ない白箱におさめられている。店名が書かれていないということは、誰かの手作りか。


「ありがとう存じます。でも、御伽噺の悪い魔女のようなことをなさるのね。夜遅くにこんな豪華なお菓子を食べさせようだなんて、わたくしをまるまると太らせて食べてしまおうというおつもりでしょうか」

「これは失礼。美味しそうでしょう、あなたと一緒に食べたくなったのでつい。明日は茶葉を持ってきましょう」


おどけてみたら、笑ってさらりと理由を訂正された。……やっぱり手慣れている。
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