あなたに呪いを差し上げましょう(短編)
「いくさのわからぬ者が勝手を申します。殿下。どうぞ、この国をお守りくださいませ」


呪いを。


「平和をお守りくださいませ」


呪いを。言霊を。あなたが望むなら、永遠の呪いをかけよう。

何度でも、何度でも、あなたが生きられるように。


わたしはただ、苦しそうに笑うその顔が、見たくないだけだった。


「……あなたは呪いでさえ優しいのだね」


ルークさまは泣きそうに顔を歪めた。


「それでは呪いにならないじゃないか」

「呪いです。あなたさまを縛ってしまっている。ひどい呪いです」

「私が望んだことだよ。……これが呪いなら、もっとひどい呪いも、欲しい気もするけれど」


そんなことを言って、もう少し笑った。

こちらも笑い返して、名前を呼び、不躾とわかっていることを続ける。


「ルークさま。大切なものの中に、わたくしを入れてくださいませんか」


増やせ。増やせ。言霊を増やせ。しがらみを増やせ。呪いを増やせ。


このうつくしい英雄が、きっと無事に帰って来られるように。


声が震えても、視界が歪んでも、絶え間なく。

半ば祈るように。蝋がとけるように、花がしぼむように、あなたに、毒をばそそげ。
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