クールな同期と熱愛はじめ

桜木くんは私の手を握ったまま、半歩前を歩く。そうしてもらうことで、不思議と気持ちが安定していく。
その手は、エントランスに横付けされたタクシーに揃って乗り込むまでつながれたままだった。

ホテルが遠ざかり高梨さんから離れたところまで来ると、ようやくいろいろなことが考えられるようになる。

桜木くんは、どうしてあそこに来たんだろう。
どうやって、あの部屋がわかったんだろう。
疑問が遅れて沸いてきた。

ところが、一度沈黙に包まれると口を開くのが躊躇われてしまう。
横目で見た桜木くんは、窓の外へ視線を向けていた。
開こうとした唇をぎゅっと閉じ、桜木くんとは反対側の窓の外をぼんやりと見た。

数十分後タクシーを降り、マンションのエレベーターを並んで待つ。


「落ち着いたか?」


桜木くんに不意に尋ねられ、「うん」と頷いた。
沈黙が破られ、口を利きやすくなる。


「ねぇ、どうしてあそこに桜木くんが来たの?」


まるで、私が困っていることがわかったみたいに。
助けを求めていることに気づいたのはどうして。

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