クールな同期と熱愛はじめ

「人の体で欲情すんなよ」


桜木くんは意地悪な笑みを浮かべていた。


「――は!? そ、そんなのしてないから!」

「悪いが、ムラムラされても今は抱けない」

「だから違うってば!」


立ち上がって、思わずタオルを投げつけた。


「もう知らない!」


そそくさと部屋を出ていこうとすると、「おい」と呼び止められた。
ドアのところで振り返る。思いきりしかめっ面だったのは、自分でもわかった。


「助かったよ。ありがとう」


不意打ちのお礼に顔の筋肉が若干緩む。


「この前のお返しだから。他にもなにかあったら連絡して。有料で来てあげる」


有料のところを強調した。
ドアをバタンと強めに閉じ、ダイニングに置いてあったバッグを取る。そこで、汚れた食器を部屋に置き忘れたことに気づいた。

一旦バッグを置き、ドタドタと足音を響かせて彼のいる部屋へと入る。

桜木くんは替えのパジャマに着替え終えていた。無言でトレーを運び出す私を見て、クククと笑みが漏れる。

そんな彼を横目で睨み、もう一度ドアを勢いよく閉めた。
キッチンで豪快に出した水で茶碗を洗っていく。


「もう最低。本当に知らないんだから」


ブツブツと不平不満を言いながら、気持ちと裏腹に高鳴る胸を宥めた

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