部長が彼になる5秒前
……そうだ。
気付かない振りをしていただけで、私はいつもあの背中を追いかけて来た。
憧れや尊敬だけじゃ抑えきれないくらい、
水瀬部長が好きなんだ。
好きだという自覚が、私の目を醒ます。
「うん、そう…。好きな人ができたの。
……だから、ごめんなさい。」
返事を待つ橘に向かって、
揺るぎないトーンでそう告げる。
それを聞いた彼は、いつもの調子に戻って、
「うん、分かってた。」
と言う。
「ちょっとでも振り向いてくれないかと期待してたけど、佐野が全然気付いてくれないから、やっぱり直接伝えようと思った。
言ったことも後悔してないし、振られても同期として仲良くしてほしい。」
そう話す橘は、「お前も好きな相手にちゃんと話せよ。遠慮すんな。」と付け足した。