部長が彼になる5秒前
「……浴衣、似合うな。」
ロウソクに灯を点したり、バケツに水を張ったり、一通り準備が整った所で、部長が私にそう言った。
「ありがとう、ございます。」
さすがにこの状況は、照れる。
この空気を振り払おうと、私は花火に火を点けた。
久しぶりの手持ち花火は、その光のシャワーの中に想像以上の懐かしさを秘めていた。
「うわぁ……綺麗ですね。」
そう言って部長の方を向くと、
既にこちらを真っ直ぐ見ていたらしい彼と目が合う。
どうしよう、目が離せない。
お互いの手に持つ花火が消えて、一旦辺りが暗くなる。
その暗闇に紛れて、部長が私の髪に手を伸ばす。
「……この簪も、綺麗だ。」