部長が彼になる5秒前


待ち合わせ場所の公園に、まだ部長は来ていなかった。

今日、告白するんだ……。

慣れない浴衣と、好きだと自覚してから初めてのデートということもあり、どうしようもないほど緊張する。

ペシペシと頰を叩いていると、

「お待たせ。」

と、後ろから声をかけられた。
当然、立っていたのは水瀬部長で、ただ、いつもと様子が違う。

ポロシャツにジーンズという格好もそうだが、何より部長の手にはバケツ。

手持ち花火をするため、私は花火とロウソク・部長はバケツとライター
と、あらかじめ持ち物の担当を決めていたが。

ここまで部長とバケツがミスマッチとは。
普段見ない光景に、思わず吹き出してしまう。

「何が可笑しいんだ?」
部長が無表情で尋ねる。

「いえ、なんでも。」
と言って、さっと笑いを堪えた。
さっきまでの緊張が、不意に解ける。
夏の夜、初めての花火デートが始まった。

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