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窓際の四名席に私とおばさまが隣り合って座り、私の正面に男性が座った。
大きな窓からは駅構内の様子が見え、暑そうに何かのパンフレットであおぎながら歩いて行く人の姿もあるけれど、ガラス一枚へだてたこちらは冷蔵庫並みに冷えている。
「私もあの子を妊娠してた時は切迫流産になってね。二人目だからって油断して雪掻きしたのがいけなかったみたいなの。結局入院。だからあの子が切迫になったって聞いて、『私がそんな風に産んだせいなんじゃないか』って申し訳なくてね」
おばさまは切迫早産になった娘さんのお世話をするために、田舎から出てきたそうだ。
それで容態が安定したので一ヶ月ぶりに自宅へ戻るところだという。
紙袋は全部、親戚やご近所に配るお土産なのだとか。
同棲していた部屋に置いていた荷物なのか、それとも定価の数十倍の値段で売りつけられた謎の教材だろうか、なんて想像していたのに、バームクーヘンや羊羮がぎっしり詰まっていた。
「でも遺伝とも限らないし、要因はいろいろあると思うので、責任感じることないんじゃないでしょうか?」
「頭ではわかってるの。だけど親って責任感じるものなのよ。まあ、高齢出産だから何かとリスクはあるのよね。悪阻もひどかったし、検査でもあれこれ引っかかって。この分だと出産も簡単ではなさそう。あら? これイチゴじゃない。“クランベリー”……? へえ、おいしい」
おばさまはレアチーズケーキのソースをフォークですくい、寄り目で凝視した。
「大丈夫ですよ! ちょこちょこ悪い運を使ってるんだから、ツルンと珠のような子が元気に産まれてきます! あ、こっちも普通においしい」
他人の特権で言い切って、私も黄色いモンブランを口に運んだ。
栗らしいザラついた食感を久しぶりに楽しむ。
「そうかしらねえ?」
「そうです、そうです。絶対そうです。今たくさん苦労させた分、親孝行&おばあちゃん孝行な子に育ちますよ」
どーんと景気よく励まして、中央の栗を頬張った。
通りすがりの人に余計な負荷を与えても意味がない。
彼はと言えば、アイスコーヒーを飲んだら寒くなったようで、皺のついたジャケットを着こんでいた。
ニコニコ笑ってはいるものの、曖昧にうなずくばかりで会話に入ろうとはしない。
若い男性(恐らく独身)が出産の話題に巻き込まれたら、この程度の反応しかできないのだろう。