今宵の月のように
8・さよならなんて言わないで
最後に彼氏がいたのはいつだっただろうか?

「――こより…」

熱っぽい瞳が私の顔を覗き込んできて、私の名前を呼んだ。

最後に抱かれたのは、いつだっただろうか?

宮本さんの背中に両手を回して、彼を受け入れた。

「――みや、もと…さん…」

呟くように彼の名前を呼んだら、
「――“宵”って、呼べ…」

宮本さんがそう言って、頬に唇を落としてきた。

言われなくてもわかってる。

それは、彼の下の名前なのだから。

「――こより…」

宮本さんが私の名前を呼ぶ。

「――ッ、よ…い…」

震える声で彼の名前を呼んだら、私の目から涙がこぼれ落ちた。

宮本さんは優しく笑って、まぶたに唇を落としてきた。

三日月が涙で滲んで、ぼやけて見えた。
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