義理じゃないチョコ、あげます。
なんだか、勘違いしそうなセリフだなあ。
そう、思わず笑ったとき。
ふと、昨日見た光景が脳裏に浮かんで。
チクリと何かが胸にささる。
「カナ?」
「あ、ううん、なんでもない!」
今度こそ、ヒロに八つ当たりなんてしたくない。
ヒロに悲しい顔はさせたくない。
そんな思いで、顔を上げる。
ヒロの顔を、まっすぐに見つめて。
「試合、頑張ってね!」
ヒロの真似をして、ニッと笑ってみせた。
ヒロはぽかんと固まっていて、なんだか面白い。
「あはは、なんて顔してるの!」
「…っ…、カナのせいだろ…!」
ハッとしたヒロは、焦って言い返してくるけど。
みるみる赤くなる顔に、また笑う。
「あっはは!ほらほら、試合始まるよ!」
「あー、くっそ…」
ヒロは頭をガシガシとかきながら、横目で私を睨む。
でも、そんなの全然怖くないよ?
ぷっ、と吹き出した私を、恨めしそうに見つめると、ヒロはくるりと踵を返した。
「俺もう行くから!」