クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~





すがりつくように、両手を伸ばしてきた。その大きな手は震えていて……。幼い子どものごとく項垂れた彼を、私はそっと抱きしめた。


「……ありがとうございます、そう言ってくれて。でも……私は決めたんです、あなたと対等の仕事のパートナーになりたいと……
言いましたよね?私は……あなたといるだけでしあわせだって……たとえペットでも、あなたのそばに居られてよかった。ちゃんとあなたは私を見て必要としてくれた……だから、私は……しあわせでした」


伝えよう。自分の気持ちを……きっとこれが最後だから。

もしも彼が兄だとしても、これだけは許して欲しい。


今まで自分に自信がなかった彼のために。


「……私は、あなたが好きでした」


ピクリ、と。葛城さんの肩が跳ねた。


「一方的なのはわかってます。あなたが三辺さんを好きでいらっしゃるのも……わかってます。ただ、あなたが好きな馬鹿な女がいた……と。忘れてくださって構いません。
でも、これだけは忘れないでください。
あなたは……愛される人だと。しあわせになれる人なんです。だから……」


しあわせに、なってくださいね。


私は、精一杯の想いを込めてそう囁いた。


サヨナラの、代わりに。
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