クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~




何を言われたかわからない、葛城さんはそんな顔をした。


「……なぜ」

「え?」

「どうして、おまえは……」


急に肩を掴まれ、驚きで身体が跳ねた。


「……なぜ、そこまでオレのことばかり? 自分のことはどうなんだ!?」

「……葛城さん?」


彼は、何を、言ってるんだろう?


私のこと?


「おまえの……おまえ自身の望みは? 本当に欲しいものはないのか」

「私の……望み……欲しいもの……」

「そうだ。夕夏、おまえの欲しいものだ。こうしたい、こうなりたい……そんなおまえの気持ちを教えてくれ。どんなことでもいい。オレはそれを……」


彼がそう教えてくれたことで、ようやく理解できた。


でも……


私は、葛城さんに向かってゆっくりと首を横に振った。


「望みは、さっき言いました。あなたにしあわせになって欲しい……ただそれだけ。
あ、すみません。ひとつだけ……チョコのことはお願いしていいですか?
引っ越し先はたぶんペット禁止ですから。あ、もちろん養育費はお支払いしますね」

「夕夏……」

「あ、すみません。私ばかり……今度は葛城さんの望みや希望をおっしゃってください」

「オレは……」


葛城さんは今までで一番苦しそうに、そして堪えるように告げた。


「オレは……おまえにそばにいて欲しい。それだけでいいんだ」


< 178 / 280 >

この作品をシェア

pagetop