クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~
何を言われたかわからない、葛城さんはそんな顔をした。
「……なぜ」
「え?」
「どうして、おまえは……」
急に肩を掴まれ、驚きで身体が跳ねた。
「……なぜ、そこまでオレのことばかり? 自分のことはどうなんだ!?」
「……葛城さん?」
彼は、何を、言ってるんだろう?
私のこと?
「おまえの……おまえ自身の望みは? 本当に欲しいものはないのか」
「私の……望み……欲しいもの……」
「そうだ。夕夏、おまえの欲しいものだ。こうしたい、こうなりたい……そんなおまえの気持ちを教えてくれ。どんなことでもいい。オレはそれを……」
彼がそう教えてくれたことで、ようやく理解できた。
でも……
私は、葛城さんに向かってゆっくりと首を横に振った。
「望みは、さっき言いました。あなたにしあわせになって欲しい……ただそれだけ。
あ、すみません。ひとつだけ……チョコのことはお願いしていいですか?
引っ越し先はたぶんペット禁止ですから。あ、もちろん養育費はお支払いしますね」
「夕夏……」
「あ、すみません。私ばかり……今度は葛城さんの望みや希望をおっしゃってください」
「オレは……」
葛城さんは今までで一番苦しそうに、そして堪えるように告げた。
「オレは……おまえにそばにいて欲しい。それだけでいいんだ」