クールな課長とペットの私~ヒミツの同棲生活~



あの後、葛城さんは言葉少なに私を引き止めようとしてきた。


けれど、私は出ていくことは譲れなかったから。話し合った結果、何とか譲歩して2月14日までは住むことが決まった。

何か中途半端な期間が気になったけど、1ヶ月という時間を考えて決めたらしい。
“そんなに急いで決めなくていいだろう”……と。最後はやけにあっさりと引き下がったのが不思議だったけど。


葛城さんが言うには、もっと時間をかけていい物件や家具などを探した方が後悔しないということらしい。


(確かにそうだけど……)


でも、何だか気になった。


あれだけ苦しそうな顔をしてたのに……私が抱きしめた後、前髪から見えた彼の口元が笑っているようにも見えたことが。


(なにか可笑しなことでもあったのかな?)


もしかして、私の説得が効いて恋人を持つ気になれたのかもしれない。それはそれで寂しいけど……。彼がしあわせになる気になれただけでも十分だ。


今まで深くひとと関わろうとしなかった葛城さんが、ようやく心を許す相手を作るなら……きっとしあわせな家庭を築ける。それを想像しただけで、自然と笑みがこぼれたのか。三辺さんが「あら、いいことでもあったの?」と訊ねてきた。


「はい……でも内緒です」

「あら、意地悪ね」


クスリと笑う彼女に笑い返す。三辺さんとこんな会話ができる日がくるなんて想像もしなかったけれど。何だかお姉さんと一緒にいるようで居心地がよかった。


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