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「どう?美味しい?」

「うん、美味しい」

彼が連れてきてくれたのはこじんまりとした料亭屋さんだった。

目の前に並ぶ和食達は本当にどれも美味しくて。こんなに食べることが幸せだと思ったのは初めてだった。


「セツナは美味しそうに食べるね」

テーブル一つをはさんで座る彼は、私が淡々と食べているさまをずっと眺めているだけで一向に箸が進んでいない。

そんなに人が口をもぐもぐと動かしているのを見るのが楽しいものなのだろうか。


喜怒哀楽を持ち合わせていない私に美味しそうに食べるね、と言った彼は変わっている人だと思う。私の顔はいつだってサイボーグのように固まったままなのだから。


「それは、勘違いだと思うけど」
「ううん、セツナさっきより頬が緩んでる、美味しいんだなってわかるよ」

セツナが美味しいって言わなくても分かるくらい分かりやすいよ?
悪戯に笑う彼は固まった私を見て満足したのか、やっと箸を手に取った。



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