氷の華
その図式の中に、感情が入り込む余地はない。


莉沙の視線を気にせず、更に店内を見渡す。


全てを乳白色で揃えるのは不可能でも、ライトの光量を調節次第で、それらしく見せるのは可能だ。


「愛子をあとで社長室に呼べ。」


俺の後ろを付いてくる柴山にそう告げると、店内を見渡すのは止めて奥に進んだ。


毛足の長い深紅のフロアマットが、靴音を吸い取っていく。


社長室というプレートが張り付けられたドア。


柿沢が先回りして、その白いドアを開いた。
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