氷の華
「そうか、分かった。今日はもう帰って良い。明日の朝に柿沢を家にやるから、初出勤は明後日の夜からだ。」


最後は言い捨てるように、氷藤社長は氷の声を放った。


その後はもう私に興味が無くなったかのようで、デスクチェアを半回転させ、ブラインドの降りている窓の方を向いた。


当然の如く生まれた私からの意見には、聞く耳を持たないといった感じだ。


「分かりました。失礼します。」


だって、私にはそう言う権利しか与えられてないみたいなんだもの。


こっちに背中を向けている氷藤社長と、冷静な面持ちを崩さない柿沢店長に一礼して、振り返った先にあるドアノブに手をかけた。


今日の初出勤の為に、気合いを入れて化粧もしてきたのにという思いは、心の中でグッと堪えた。
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