太陽に手を伸ばしても



「伊藤さん!!」

試合が終わって、ベンチに戻ろうとした僕を、後ろの方から呼び止める声がする。

振り返ると、向こうの学校の例のピッチャーがこっちに向かって走ってきた。


「また、いつか一緒に対戦しましょう!」

彼はそう言うと、白い歯をにっ、と見せて笑ってきた。

同時に右手を出して、握手まで求めてくる。
手を握ると、ぎゅっと強く握り返してきた。

あんなにすごい選手なのに、偉ぶらない良い人だな、と思った。


「前、偵察行ったときめっちゃ球速かったから、今度はあれ見せてください」


僕はこの言葉になぜか救われた気がしてしまった。


僕は、速い球が投げられるんだ。

千夏さえ目に入ってこなかったら、互角まではいかなかったにしても、もう少しなんとかなっていたんだ。

そう思わせてくれただけでなぜか救われてしまったのだ。





「じゃあ、県大会の決勝で会おう!!」



つぶれそうな気持ちから一瞬だけ解放されてなぜか気が大きくなってしまった僕は、だいぶ恥ずかしいことを言ってしまった。


僕の学校、ベスト8入りしたことあるんかい!!





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