君にまっすぐ
「今までの彼氏達も軽トラタイプだったの?」

「んー、彼氏たちって言ってもまともにお付き合いしたのは1人しかいないんですけど、どちらかと言えばそうですね。一緒にいて落ち着ける人でしたね。」

「今まで1人しかいなかったんだ。」

「私なかなか人を好きになれないんですよね。ある程度仲良くなってその人の人となりを知ってからじゃないと好きになれなくて。だから、これまで好きになったのはクラスメイトとかバイトが一緒の人とかでした。その中で付き合うことになった元カレも大学の時にサークルが同じだった人で。」

「一緒にいて落ち着ける人だったのに別れちゃったの?」

「大学卒業するときに、私は就職、彼は進学で進路が別れて価値観がお互いに変わってきて、忙しさもあってすれ違ってしまって。さらに、彼の師事する教授が関西の大学に移ることになったので、遠距離恋愛する自信も気持ちもお互いに持てなかったことが理由ですかね。」

「じゃあ、特別嫌なことがあって別れたわけじゃないんだ?」

「そう、ですね。」

「今でも彼のことが好きだと思ったりするの?」

「たまにどうしてるかなと思うことはありますけど、好きとは違うような気がします。もう別れてから2年も経ちますし。お互い納得の上で別れたわけですから。」

「就職してからは誰とも付き合ってないんだ?」

「そうですね。出会いもなかったですし、何より大好きな車に囲まれて仕事ができることが楽しくてしょうがなかったというのが1番の理由ですね。オルディさんも毎日のように拝めますし〜。」

いつものメロメロ笑顔でオルディの魅力を語りだしたあかりを見ながら、孝俊はあかりにとって落ち着ける存在だったという過去の彼氏に苛ついた。
孝俊にとってすでにあかりが1番落ち着ける存在になっているというのに、あかりにとって1番落ち着ける存在ではないということも嫌だった。
あかりにとって安らげる存在になりたいという思いが溢れてくるが、表情にでないように取り繕った。

「孝俊さん?どうかしました?」

「どうもしてないけど、何で?」

「隙のない笑顔になってます。私なにかまずいこと言いましたかね?」

あぁ、やはりあかりにはこの笑顔は通用しないんだなと改めて実感する。
俺の少しの変化を見抜いてくれるあかり。
あかりに気にかけてもらえているということが孝俊の苛立った感情を温めて平穏にしていく。

「いや、俺とは正反対の付き合いをしてきたんだなと思っただけだよ。」
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