君にまっすぐ
「あかり、これからどうするんだ?」

「どうって?どうもしないよ?」

「御曹司のこと、好きなんだろ?こないだあんなふうに声を荒げるあかりなんて今まで見たことなかったよ。」

「う…ん。もう賢介には隠せないね。でも、ただ自覚した、それだけだよ。」

「気持ちを伝えたりしないのか?」

「しないよ、するわけないじゃない。こないだも言ったでしょ。私の行動で傷つく人が出てくるのは耐えられないの。」

「御曹司もあかりのことが好きなんだろ。婚約者とは政略結婚って言ってたし、傷つく人はいないかもよ?」

「いるわよ。私が傷つく。」

「あかりが?」

「自分がそういう行動をして、もし仮に仲が発展してしまったらどうするの?自分で自分が許せなくて、私が私ではなくなってしまうと思う。だから、わたしはこのままでいいの。」

「それがあかりらしさか。でも、自分の気持ちには正直でいろよ。それもあかりらしいところだからな。気持ちは自由だ。」

「ふふっ。そうだね。ありがとう、賢介。これからも友達でいてね。」

「あぁ、それはもちろん。あ、でも…。」

「でも?」

「いや、なんでもない。」

首を傾げながらお酒を飲み進めるあかりを賢介は見る。
きっとあいつはあかりを迎えに来る。
奴が行動を起こしたら、こうして飲みに来ることもできないな。
なんたって、あいつはかなり独占欲が強そうだ。
賢介はこみ上げる笑いをこらえきれず、ハハッと笑いがもれる。
そんな賢介を訝しげに見ながら変なのとつぶやきつまみを食べているあかりに、幸せになれよと心の中で投げかけた。


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