君にまっすぐ
「結論を出す時だな。」

居酒屋でお互いの飲み物が揃ったところで賢介が口を開く。

「結論?」

「そう、結婚を前提によりを戻すか、ただの友達に戻るか、他人になるか。」

「他人って。今更赤の他人には戻れないでしょ。知っちゃってるし。」

ふふっと笑いながらあかりは賢介と向き合う。

「たぶん、俺とあかりの意見は一致してるんじゃないかな?」

「私もそう思う。」

「俺達会ってから、過去の話か仲間の話しかしてないな。」

「そうだね。現在の話、未来の話がほとんど出なかった。」

「もちろんお互いに一緒にいて落ち着くし、安らぎも感じる。家族になってももちろんうまくいくと思う。ただ、家族にはなれるけど」

「「夫婦じゃない。」」

2人の言葉が重なり、目を合わせ微笑み合う。

「私、理想の結婚相手って、軽トラのような実直で誠実な一緒にいて落ち着ける人だってずっと思ってた。もちろん今でもそう思ってるけど、それだけじゃないんだね。」

「そうだな。会わなかった2年間の話になった時にいい感じになった子がいたって話しただろ?あかり、その時少しでも嫌だって思ったか?」

「…ううん。思わなかった。そっか、ってだけ。」

「俺も同じだ。あの人が現れた時、婚約者がいるって黙ってたって聞いてたから、あかりをどうする気だって、何かしたら承知しない、っていう気持ちだったけど、それだけだった。あかりを他の男にとられたくないとか思わなかったんだ。」

「うん。もちろん賢介には幸せになってほしいと思ってる。でもその幸せが私とじゃなくてもいいんだ。」

「そう。俺もあかりには誰よりも幸せになってほしいと思ってるけど、俺が幸せにしたいという気持ちじゃない。」

「ふふっ。家族みたいだね。」

「そうだな。まさに家族。兄妹みたいな感じか。」

「私がお姉ちゃんね!」

「妹だろ?」

2人で笑い合う。
この感じが心地いい。
でも、夫婦ってそれだけじゃないんだ。
お互いがお互いに幸せにしたいと思っているそんな関係なんだと思う。
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