次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「文香、考え事する時にシワを作ってはダメよ。シワが取れなくなっちゃうから」

不意に眉間を撫でられて、思考が止まってしまった。

焦点を合わせると、目の前にはちょっと怒った耀子母さんのアップ。

「はい。ごめんなさい」

「まだ若いから気にならないでしょうけど、文香の綺麗な顔にシワなんて、母さんイヤだわ」


こんな風に耀子母さんの可愛らしいお小言を聞くのは久しぶりだ。なんだか嬉しくなる。


「ふふっ。文香はお祖母様の希望で國井の家に来たけど、喜んだのは母さんも、なんだな」

「あら、何を今更。娘が欲しかったのは私も同じですもの。お義母さんと一緒に文香のお洋服選ぶの、本当に楽しかったわぁ。それが今度は」

「着いたよ」

駿介の呟きに反応した耀子母さんの言葉を遮って、降りるように指示される。

車が止まったのはお店の前だけど、百貨店じゃない。
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