次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「ふふっ、そうね。文香は我が家のお姫様だから」

「違いますよ。俺の、お姫様なんです」

「はいはい。じゃ、王子様はどちらの色がお好みかしら?」

「ーーお姫様でも王子様でもないですっ!」


ドレスを選んでくれるのは嬉しいけど、暴走するのは勘弁して欲しい。強い口調で注意したら、お祖母様がころころと声を上げて笑った。

「もぅ!お祖母様も注意して下さい」

「いいじゃない。文香と一緒に暮らした時間が幸せだったってことだもの。
私ね、本当の事を言えば、自分の我が儘で文香を家族から引き離してしまった事を後悔した事もあるの。一人の人生を変えてしまったんですもの。でも、こうやって今もみんなで笑っていられるなら、わたしの我が儘も満更じゃなかったって思えて。ね、文香はもそう思ってくれる?」

「‥‥はい、お祖母様」

穏やかで包み込むようなこの表情に、私はずっと見守られて来た。それを幸せに思っているのは紛れも無い真実。

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