次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
その視線、声音、手の動き全てにゾクゾクと悪寒が走った。鳥肌は立っているし、膝もガクガクと震えだす。全身が拒否反応を示している。

「あの、それは、あの‥‥」

さらりと流さなければと思うのに思考が止まって、言葉さえ出てこない。

「俺も今はシングルに戻ったし、今度メシに行ってやるよ。すごいだろ?遠慮しなくていいぞ」

ねっとりとした視線は色をはらんでいて、捕食者が獲物を見つけた時のそれだ。

「あの、ですが仕事でなかなか自由な時間が取れなくて‥‥」

頭の中で危険だとアラームが鳴る。

「お前、俺の誘いを断るつもりか?」

逃げる言葉に一気に不機嫌になった敏彦さんが私の肩に置いた手にぐっと力をこめた。

その痛みに顔をしかめた瞬間、強い腕に引かれた私は、不快な拘束から離れていた。

「お久しぶりですね、敏彦さん。どうして今日はここにいるんですか?」

ゆっくりとした動作で私を背後に隠してくれた駿介が剣呑とした声を発した。
< 129 / 217 >

この作品をシェア

pagetop