次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「あの、解決って‥‥それに今後って‥‥‥」

急な話の展開についていけなくて、敏彦さんの言葉を繰り返す私を、ニタリとした笑みが馬鹿にしたような声を出す。

「なんだよ、ホントに鈍いんだな。それでよく國井の秘書が務まってたもんだ」

「ーー申し訳ありません」

「まぁ、いいや。説明してやるよ。國井の本家で育ててもらったくせに、あくせく働いてる馬鹿な文香に、すっごい話をな」

嫁に欲しいというわりに存分に馬鹿にしてくるのが理解出来ないが、まずは敏彦さんの説明を聞くべきだろう。色々と飲み込んで、小さく頷く。

そんな私の反応に満足したんだろう、私に好みを聞くことなく勝手に注文した敏彦さんは、注がれた赤ワインをぐいっと飲んでから得意げに話し出した。

「國井の一族に生まれたってだけですっごいんだ。分かるだろう?だから成功も地位も産まれながらに約束される。特に俺みたいに『國井』の名字を名乗る人間には」


ーーー違う。少なくともそんな事、國井の家族は誰も考えた事もないはずだ。
國井に生まれたからこその重圧に耐え、人一倍努力して地位を得るし、責任を果たした結果として成功を掴んでいるだけだ。
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