次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「お言葉に甘えて、今夜は目一杯楽しんで来ますね」

「うんうん。折角なんだから素敵な出会いも見つけてくるのよ。今日の文香ちゃん、女の私から見ても誘いたくなるくらい可愛いから」

お褒めの言葉にひらりとスカートを揺らす。

「えへへ。そう言ってもらえると嬉しくなっちゃいます」

今日は珍しく同行も来客もなかったから、仕事で許されるギリギリまでカジュアルな格好。オフショルダー気味のニットと膝上のフレアスカート。普段、秘書課でも堅い服装の私には珍しい事だ。

服装と褒められた事で更に軽くなった気持ちを抱えて、待ち合わせの場所に急ぐと、そこには久美ちゃんと‥‥湊?

「お待たせー。って湊、どうしたの?」

「あ、湊は私が誘ったの」

久美ちゃんの言葉は更に私を驚かせる。

「実はね、文香から連絡もらった後に、街でばったりルナさんにお会いしたの。で、その時にパーティに誘ってもらったお礼言ったら、湊も誘っておいでって」

「え?なんで、夏希さんが湊の事知ってるの?」

他の友達も誘っていいよって話なら不思議じゃない。でも湊を指名して誘うって変だ。

「私もね、不思議に思って、なんで湊の名前知ってるのか聞いたのよ。そしたら駿介さんに話してたからって」

確かに個展に行った時、久美ちゃんは私と湊と3人で仲良しだと駿介に話してた。でもだからって名指しで誘うだろうか?

「私も不思議には思ったけどね。久美ちゃんが好きな作家さん、会ってみたかったし来てみた。行ったら、その夏希さん?の思惑も分かるだろうしね」

不敵な笑みを浮かべた湊はなんだか納得してるみたいで「じゃ、行こっか」っと促すけど、私の頭の中はまだ疑問符がいっぱい浮かんでる。
< 77 / 217 >

この作品をシェア

pagetop