次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
「‥‥確認‥‥‥次に進む」

呆けたように言葉を繰り返す夏希さんに、久美ちゃんが質問する。

「その男性、笑ってませんでした?」

「あ、うん。気味が悪いって私が揶揄うぐらいずっと笑ってた、よ」

「でしょ!それならやっぱり、彼は夏希さんの事が好きだったんですよ。元気な夏希さんを見て、それを喜べる自分を見つけて、それで初めて過去の恋心を消化出来たんですよ」

「‥‥じゃあさ、私達の、学生時代のあの時間は悔やまなくてもいいのかな?」

いつもはからりと明るくてまっすぐ前を向いている夏希さんが、今はまるで迷子の小さな女の子みたいだ。不安げに久美ちゃんを見つめている。

「悔やむなんてしないでください。彼の事を好きだったって気持ちを悔やむなんて、恋に失礼です。ちゃんと認めて、大切な思い出にして下さい」

私も偉そうに言えるほど恋愛マスターじゃないんですけどね、と言い添える久美ちゃんの声に、小さな呟きが重なる。

「ありがとう。やっと私も次の恋に進める」
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