次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
変化する関係
ビルの二階、ウォールナットブラウンで統一された店内はランクの高さより落ち着いた佇まいを感じさせる。開放的な大きな窓がなければセンスの良い個人の書斎だと思うかもしれない。

この空間はとても心地よくてずっと居られそうだ。だから、理由はこの店じゃない。

「正直申し上げて、困ります」

今の私は眉間にシワがよってしまうのが抑えられないほど不機嫌だ。でも重ねて言うが、不機嫌の理由はこの店じゃない。

「困らないだろ。昼は食べなきゃならないんだし、午後からも同行するんだ。いっそ、一緒に食事をしない理由が見つからないな」

窓の外を眺めながら、しらっと私の不機嫌を流した駿介は、隠しているがご機嫌だ。口角が上がるのを抑えきれていない。

「ですが!午前は社内で書類の決済をされていたのですし、昼食を済ませてから相手先に出かけても間に合ったのでは」

「うるさい。俺が文香と一緒に食事するって決めたんだから、それでいいんだ」

やっとこっちをみたと思ったら、怖い顔で睨まれた。

この顔をされた以上、もう反論はやめた方が良さそうだ。午後からも長いのに、ここで駿介に本格的にヘソを曲げられては仕事がしづらい。
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