冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
使用人の食事は、給仕室の一角で慎ましく済ませる。
広くはない給仕室に置かれたテーブルの脇。
人一人がやっと通れるほどの通路に並び順番を待つ。
すでに食事の終わりかけているダウリスと、ちらと目が合った。
上階級の使用人達の皿を見ると、今日は薄っすらと野菜の浮いた琥珀色のスープだ。
下階級のフィリーナもようやくありつく食事。
メリーが大鍋から一人一人にスープを注ぎ分けている。
その前に立つと、嫌でも緊張が走った。
スープの他にはパンが皿に載せられ、もう一品は豚肉の塩漬けが一切れ。
ごくりと喉が鳴ったのは、今朝ぶりの食事に生唾が出たからではない。
テーブルの隅に座り、密かに隠し持っていたコーヒー用の小さな銀スプーンを取り出す。
誰にも見られないよう、スプーンをスープに浸した。
小さく一呼吸を置いて、手元を見る。
すると、艶やかな銀色が、琥珀の中でじわりと色を変えた。
広くはない給仕室に置かれたテーブルの脇。
人一人がやっと通れるほどの通路に並び順番を待つ。
すでに食事の終わりかけているダウリスと、ちらと目が合った。
上階級の使用人達の皿を見ると、今日は薄っすらと野菜の浮いた琥珀色のスープだ。
下階級のフィリーナもようやくありつく食事。
メリーが大鍋から一人一人にスープを注ぎ分けている。
その前に立つと、嫌でも緊張が走った。
スープの他にはパンが皿に載せられ、もう一品は豚肉の塩漬けが一切れ。
ごくりと喉が鳴ったのは、今朝ぶりの食事に生唾が出たからではない。
テーブルの隅に座り、密かに隠し持っていたコーヒー用の小さな銀スプーンを取り出す。
誰にも見られないよう、スプーンをスープに浸した。
小さく一呼吸を置いて、手元を見る。
すると、艶やかな銀色が、琥珀の中でじわりと色を変えた。