冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
 ――どうしてだろう……自分の言葉が、内側から心を刺してくるよう。

 それを納得するディオンの志強い眼差しに、ますます痛みが増した。

「君は、本当に優しい娘だ」
「そ、そんな、生意気にも国王となられるお方に物申すなど、大変な失礼を致しました」

 焦って頭を下げると、「フィリーナ」と呼ぶ澄んだ声に顔を上げた。

「そう言ってもらえると、沈みゆく心が軽くなるようだよ」

 柔らかく細められる漆黒の瞳に、美しい光が増す。
 そよぐ風に瞳と同じ色の髪が揺れ、目が惹きつけられた。

「だから、いなくなられては困る。
 ……心配だったのだ、本当に」

 低く呟くディオンは、漆黒の瞳を真っ直ぐフィリーナに向けた。
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