冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「これに毒が塗られでもしていたらどうするつもりだった?」

 胸元に抱いていた赤い花びらが長い指に摘まれる。
 指と指がかすかに触れ合い、そこから痺れるような感覚が心臓までを駆け抜けた。

「そこに落ちている花びらを、ためらいなく拾ってしまうような君を、放っておけなかった」
「……」
「気になって居て立ってもいられず、ここへ赴いたのだ」
「……っ」

 花びらを持った指の背が、フィリーナの頬をさらりと撫ぜる。
 瞬く間に急騰する顔の熱と、胸の高鳴りに目眩がした。

 ――それは、どういう意味なのですか?
 私という一国民に、王宮内で何かがあったら混乱するから?
 それとも――……

「ディオン様?」

 もう一つの答えの先を考える前に、ディオンはすっとフィリーナから身を引いた。
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