現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。



――……

「ごめん。ほんっとにごめん!!」


私の叫び声でバチッと目を覚ました志木さんは、起きた瞬間に状況を把握し、私からバッと離れるようにしてベッドから降りた。

私は逆に、布団に潜りこんで、恥ずかしさに耐えていた。


その後、彼の説得により、なんとか布団から抜け出し、リビングのソファに連れていかれ、隣に座った彼にさっきから何度も謝られている。



……寝ぼけることは誰にだってある。同じベッドでいっしょに眠ることだって、私が選んだこと。
だから彼を責める気は一切ないのだけれど、恥ずかしすぎて、”気にしないでください”と明るく返すことができない。


……だから。


「……帰りますっ」

私は立ち上がり、服やバッグを置かせてもらっている部屋に向かおうとする。


「ご、ごめん、ほんとに!」

彼が後ろから私を引き止めようとするのを気配で感じる。

だけど私は、捕まらないように、素早く部屋に逃げこんだ。

閉めた戸の外から、「沙代、沙代」と私の名前を呼ぶ彼の声が何度も聞こえたけれど、私は無視してしまった。


そして、着替えを終えて荷物をすべて持つと、戸の外から彼の気配がなくなっていることを確認して、あいさつもなしに彼の家を出てしまった。
< 65 / 142 >

この作品をシェア

pagetop