次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
その夜。宣言通りに、ディルはプリシラの部屋にやってきた。
「お疲れさま。戴冠式にパレードにパーティーにと、疲れたでしょう」
二人のベッドに腰をおろしたディルから、ずいぶんと離れたところでプリシラは声をかけた。
「全然。すごく元気だよ」
「そ、そう?えっと、パーティーは楽しかったわね。王都警備隊から開放されたリズにも久しぶりに会えたし、ターナも嬉しそうだったし」
知らない振りで構わないと言ったディルの言葉を無視して、リズは自らの罪を告白してしまったのだ。そのため、つい最近まで王都警備隊のしつこい取り調べを受けていた。やむにまれない事情があったこと、真犯人逮捕に大きく貢献したことなどが考慮され無事に釈放された。またプリシラの侍女として勤めてくれることに決まったのだ。

「あっ、スワナ公とマリー様も。久しぶりにお話できて楽しかった」
スワナ公夫妻と子ども達もお祝いにかけつけてくれたのだった。
「そうだな。楽しみなプレゼントももらったしな」
ディルの言葉にプリシラはおおいに焦った。
(しまった!いま、話す話題じゃなかったわ)
マリー妃からのプレゼント。それは……可愛らしい産着だった。ただし、びっくりするほど大量の!
『ね!これだけあれば、た〜くさん赤ちゃんが産まれても大丈夫でしょ』
マリー妃の楽しそうな顔を思い出す。

「頑張るって約束したしなぁ」
ディルはこちらを見て、にやりと笑う。ゆっくりとベッドから立ち上がるとプリシラに向かって、まっすぐに歩いてきた。
「ディ、ディル?」
「おしゃべりはそろそろおしまいにしないか?」
「そんな!まだたくさん話したいことが……」
「なんの話だ?」
「政治や外交問題のこととか。ほら、王妃としてもっと勉強しないとと改めて思って」
「明日の昼に教えてやる」
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