次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
ひと月にもわたる、様々な儀式のラストを飾るのが大聖堂での結婚式だ。
これまでの儀式は、あまり派手に騒がないようにとの配慮のもとで行われてきたが、この結婚式だけはそうもいかない。
各国から要人を招待している手前、国の威信をかけて盛大にやらざるをえないのだろう。多くの人と金が動いた結果、王宮はまぶしいほど豪華絢爛に飾り立てられていた。
王宮中の人間が昨夜から一睡もせずに働き続けている。
(ぼんやりしてるのは、私だけね)
お祭りの中心にいるはずなのに、なんだか遠い世界の出来事を眺めているような気分だった。目の前の重い扉が開けば、始まるのは自分の結婚式だというのに、実感がわかない。
「ずいぶんと重そうだな」
王族の正装に着替えて登場したディルがプリシラの花嫁衣装を見やりながら言った。
「えぇ。立ってるだけで、精いっぱいよ」
決して大げさに言っているわけではない。王家に輿入れする花嫁が着るドレスは代々受け継がれているものなのだが、嫁いびりなのかと問いたくなるほどの重量だった。
国花であるミモザの意匠が織りこまれた生地に、数えきれないほどの宝石が縫いつけられている。ヴェールもトレーンも、プリシラの身長の何倍もの長さがある。
「極めつけは、このティアラね」
プリシラは苦笑しながら、自分の頭を指差した。このティアラはミレイア王国の国宝のひとつに数えられる由緒ある品なのだが、これがまたびっくりするほど重かった。
「なにせ、この花嫁衣装を着た状態で笑ってられることが王妃の条件って言われてるらしいからな」
「たしかに。予想以上に難しい条件だわ」
これまでの儀式は、あまり派手に騒がないようにとの配慮のもとで行われてきたが、この結婚式だけはそうもいかない。
各国から要人を招待している手前、国の威信をかけて盛大にやらざるをえないのだろう。多くの人と金が動いた結果、王宮はまぶしいほど豪華絢爛に飾り立てられていた。
王宮中の人間が昨夜から一睡もせずに働き続けている。
(ぼんやりしてるのは、私だけね)
お祭りの中心にいるはずなのに、なんだか遠い世界の出来事を眺めているような気分だった。目の前の重い扉が開けば、始まるのは自分の結婚式だというのに、実感がわかない。
「ずいぶんと重そうだな」
王族の正装に着替えて登場したディルがプリシラの花嫁衣装を見やりながら言った。
「えぇ。立ってるだけで、精いっぱいよ」
決して大げさに言っているわけではない。王家に輿入れする花嫁が着るドレスは代々受け継がれているものなのだが、嫁いびりなのかと問いたくなるほどの重量だった。
国花であるミモザの意匠が織りこまれた生地に、数えきれないほどの宝石が縫いつけられている。ヴェールもトレーンも、プリシラの身長の何倍もの長さがある。
「極めつけは、このティアラね」
プリシラは苦笑しながら、自分の頭を指差した。このティアラはミレイア王国の国宝のひとつに数えられる由緒ある品なのだが、これがまたびっくりするほど重かった。
「なにせ、この花嫁衣装を着た状態で笑ってられることが王妃の条件って言われてるらしいからな」
「たしかに。予想以上に難しい条件だわ」