次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「こっちも堅苦しいが、お前よりマシか」
ディルは自分の服の襟元をつまみながら、言った。ディルの着ている王家の正装はいわば軍服だった。もちろん儀式用に装飾されていて、実戦で着るものとはもはや別物ではあるが。
王家の色である濃紫の軍服に白いマントを羽織り、腰には長剣を携えている。
普段のディルからは想像できないその姿は、はっとするほど美しく、プリシラも思わず見惚れてしまった。
「あぁ、始まるみたいだぞ」
ファンファーレと盛大な拍手に反応して、ディルが言った。プリシラと同じく、彼もまた自分の結婚を他人事のようにとらえているらしい。
(結婚式‥‥私は今日、ディルの妻になる)
複雑な気持ちだった。結婚式までにフレッドが戻ってきてくれれば‥‥と思いながら今日まで過ごしたが、やはり叶わぬ願いだった。もっとも、フレッドが戻ったからといって、今さらディルとの結婚が中止になるかどうかはわからないが。
「行くぞ」
ディルに促され、プリシラは大きく開かれた扉から大聖堂へと足を踏み入れた。
一歩でも人前に出てしまえば、プリシラは自分の意思とは無関係に、理想的な王太子妃の仮面を被れてしまう。
この重苦しい花嫁衣装を着て、プリシラ以上に優美に微笑むことができる女などどこにもいない。
結婚式はつつがなく終了した。
各国の要人たちは、ミレイア王国の国家としての盤石さを再認識したことだろう。さらに、現王になにがあっても、次代には才覚あふれる王と王妃が控えていることも理解したはずだ。
ディルは自分の服の襟元をつまみながら、言った。ディルの着ている王家の正装はいわば軍服だった。もちろん儀式用に装飾されていて、実戦で着るものとはもはや別物ではあるが。
王家の色である濃紫の軍服に白いマントを羽織り、腰には長剣を携えている。
普段のディルからは想像できないその姿は、はっとするほど美しく、プリシラも思わず見惚れてしまった。
「あぁ、始まるみたいだぞ」
ファンファーレと盛大な拍手に反応して、ディルが言った。プリシラと同じく、彼もまた自分の結婚を他人事のようにとらえているらしい。
(結婚式‥‥私は今日、ディルの妻になる)
複雑な気持ちだった。結婚式までにフレッドが戻ってきてくれれば‥‥と思いながら今日まで過ごしたが、やはり叶わぬ願いだった。もっとも、フレッドが戻ったからといって、今さらディルとの結婚が中止になるかどうかはわからないが。
「行くぞ」
ディルに促され、プリシラは大きく開かれた扉から大聖堂へと足を踏み入れた。
一歩でも人前に出てしまえば、プリシラは自分の意思とは無関係に、理想的な王太子妃の仮面を被れてしまう。
この重苦しい花嫁衣装を着て、プリシラ以上に優美に微笑むことができる女などどこにもいない。
結婚式はつつがなく終了した。
各国の要人たちは、ミレイア王国の国家としての盤石さを再認識したことだろう。さらに、現王になにがあっても、次代には才覚あふれる王と王妃が控えていることも理解したはずだ。