次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「おはようございます。朝食の用意ができました」
着替えを済ませたプリシラの元に、リズが食事を運んでくれる。王太子宮にはたくさんの侍女がいるが、プリシラはミモザの宮から仕えてくれているリズに一番心を開いていた。
「ありがとう、リズ」
「昨夜はよく眠れましたか?」
「うん。ぐっすりよ。ーーどうかしたの?」
リズの微妙な表情に気がつき、プリシラはそう声をかけた。リズはためらいがちに口を開く。
「あ、あの‥‥王太子殿下はどういうつもりで‥‥」
「あぁ、なんだ。そのことね。よかった! あんまり思いつめた顔してるから、あなた自身になにかあったのかと思ったわ」
プリシラが柔らかな笑みをリズに向けると、リズは慌てたように首を横に振った。
「いえいえ、私はなにも! 差しでがましい口をきいて、すみません。ただ、プリシラ様を放っておくなんてどういうつもりなのかと‥‥」
職務熱心な彼女らしい。リズは憤っているのだ。初夜以来、一度も顔を出さない王太子殿下の態度に。
結婚式からもう半月。プリシラはあの夜以来、一度もディルと話をしていない。
公式な場である宮廷で姿を見かけることはあっても、夜はどこでなにをしているのかも知らなかった。私室で真面目に政務でもこなしているのか、相変わらず夜毎、違う女の元へ通っているのか‥‥。

「いいのよ。ディル殿下は元々そういう方だから。元気にしている証拠だわ。毎日、律儀に通われたりしたらかえって困ってしまう」
プリシラはクスクスと笑いながら、言う。その顔は、無理して強がっているようにも見えず、リズは黙るしかなかった。
よくわからない世界だが、高貴な夫婦とはこんなものなのかもしれないと、リズは自分を納得させた。
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