次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「さぁな。貴族たちはみな、フレッドはもう生きてはいないと思ってるようだけど」
心配ない、きっと帰ってくる。そう言って優しく慰めてやればいい。たとえ気休めでも、プリシラはそれを求めているのだ。
わかっているのに、突き放すような冷たい言葉を吐いてしまったのは‥‥こんな状況になっても、いまだ消せないフレッドへの嫉妬ゆえか。
『フレッドのことなど忘れて、俺の妻として生きろ』
いっそのこと、そう言って、抱きしめてしまおうか。プリシラの気持ちなど無視して、無理やりにでも自分のものにしてしまえばいい。フレッドを思い出す間もないほどに、愛して、愛して、溺れるほどに満たしてやればーー。
だが、ディルの口から出たのはまったく違う言葉だった。
「ミモザの宮にこもってたお前は知らないだろうけど、いま一番有力視されてるのはフレッドは暗殺されたって説だ」
「そんな‥‥フレッドはこの国に必要な人間よ。いったい誰がそんなことをするのよ!?」
ディルは唇の端だけを持ち上げて、薄く笑った。
「フレッドがいなくなって得した人間‥‥いるじゃないか、お前の目の前に」
「馬鹿なことを言うのはやめて!冗談にしたって、悪趣味だわ」
「そう言われてもね。宮廷では、俺が黒幕だって噂で持ちきりだよ。まぁ、現実にフレッド失踪の恩恵を一番受けたのは俺だしな」
「なにを呑気な‥‥ちゃんと否定して!証拠もなく人を犯人扱いするなんてひどいじゃない」
「俺が犯人じゃない証拠もないさ」
「ディル!いい加減にして。あなたがフレッドを‥‥なんて、考えたくもない」
なぜ、こんな言い争いをするはめになったのか。ディル自身もよくわからなかった。宮廷内でディルがあれこれ詮索されているのは事実だが、ディルの口から伝えなくとも、プリシラもじきに知ることになっただろう。
(あぁ、そうか‥‥)
ディルは腕を伸ばした。届きそうで、届かない。この距離は‥‥耐え難い。
ならば、こっぴどく嫌われてしまいたい。どんなに望んでも手に入らないものなら、目に入らないようにする方がずっと楽だ。
仲良く同じ部屋で眠ることなど、もう二度とないようにーー。
心配ない、きっと帰ってくる。そう言って優しく慰めてやればいい。たとえ気休めでも、プリシラはそれを求めているのだ。
わかっているのに、突き放すような冷たい言葉を吐いてしまったのは‥‥こんな状況になっても、いまだ消せないフレッドへの嫉妬ゆえか。
『フレッドのことなど忘れて、俺の妻として生きろ』
いっそのこと、そう言って、抱きしめてしまおうか。プリシラの気持ちなど無視して、無理やりにでも自分のものにしてしまえばいい。フレッドを思い出す間もないほどに、愛して、愛して、溺れるほどに満たしてやればーー。
だが、ディルの口から出たのはまったく違う言葉だった。
「ミモザの宮にこもってたお前は知らないだろうけど、いま一番有力視されてるのはフレッドは暗殺されたって説だ」
「そんな‥‥フレッドはこの国に必要な人間よ。いったい誰がそんなことをするのよ!?」
ディルは唇の端だけを持ち上げて、薄く笑った。
「フレッドがいなくなって得した人間‥‥いるじゃないか、お前の目の前に」
「馬鹿なことを言うのはやめて!冗談にしたって、悪趣味だわ」
「そう言われてもね。宮廷では、俺が黒幕だって噂で持ちきりだよ。まぁ、現実にフレッド失踪の恩恵を一番受けたのは俺だしな」
「なにを呑気な‥‥ちゃんと否定して!証拠もなく人を犯人扱いするなんてひどいじゃない」
「俺が犯人じゃない証拠もないさ」
「ディル!いい加減にして。あなたがフレッドを‥‥なんて、考えたくもない」
なぜ、こんな言い争いをするはめになったのか。ディル自身もよくわからなかった。宮廷内でディルがあれこれ詮索されているのは事実だが、ディルの口から伝えなくとも、プリシラもじきに知ることになっただろう。
(あぁ、そうか‥‥)
ディルは腕を伸ばした。届きそうで、届かない。この距離は‥‥耐え難い。
ならば、こっぴどく嫌われてしまいたい。どんなに望んでも手に入らないものなら、目に入らないようにする方がずっと楽だ。
仲良く同じ部屋で眠ることなど、もう二度とないようにーー。