次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
朝食を終えたプリシラは、大きな荷物を抱えて黒蝶の間を出た。母の旧友であるジーナ男爵夫人の元へ向かうためだ。子どものいない男爵夫人が我が子のようにかわいがっている姪っ子の結婚が決まったというので、祝いの品を届けるためだ。中身はプリシラの手製のウェディングベールだった。
『先に結婚した花嫁から贈られた品を身に着けると、幸せになれる』というジンクスにあやかったつもりだが……。
「かえって縁起が悪いかしら?私たちは、仮面夫婦もいいとこだものね」
プリシラは苦笑した。そして、このベールを身に着ける花嫁が自分のようにむなしい結婚生活を送らないよう、祈った。
「どうか、幸せに……」
近道をしようと、中庭の裏手の小道にさしかかったとき、数名の女たちがなにやら楽しそうに噂話をしているのが目に入った。聞き耳を立てるつもりはなかったが、甲高い声がはっきりと聞こえてくる。なんの話かも、すぐにわかってしまった。
「怖いわよね。自分の地位のために実の兄を手にかけるなんて」
「フレッド殿下はそれは立派な方だったのに。ディル殿下より、絶対にずっと良い国王になられたはずよ」
「だいたい、ディル殿下が王子の身分でいられたのはフレッド殿下のおかげでしょう。さすがは呪われた王子だわ。恩を仇で返すとはこのことね」
彼女たちはフレッドの母方の祖父、ザワン公爵家に近しい家の者ばかりだ。フレッドとも親しくしていたのだろう。
(だからといって、王宮内でこんなに堂々と王太子殿下の陰口を言うなんて‥‥)
ディルの言う通りだった。ミモザの宮にいたプリシラはなにも知らなかったが、いま、王宮内には様々な憶測や噂話が飛び交っている。
『先に結婚した花嫁から贈られた品を身に着けると、幸せになれる』というジンクスにあやかったつもりだが……。
「かえって縁起が悪いかしら?私たちは、仮面夫婦もいいとこだものね」
プリシラは苦笑した。そして、このベールを身に着ける花嫁が自分のようにむなしい結婚生活を送らないよう、祈った。
「どうか、幸せに……」
近道をしようと、中庭の裏手の小道にさしかかったとき、数名の女たちがなにやら楽しそうに噂話をしているのが目に入った。聞き耳を立てるつもりはなかったが、甲高い声がはっきりと聞こえてくる。なんの話かも、すぐにわかってしまった。
「怖いわよね。自分の地位のために実の兄を手にかけるなんて」
「フレッド殿下はそれは立派な方だったのに。ディル殿下より、絶対にずっと良い国王になられたはずよ」
「だいたい、ディル殿下が王子の身分でいられたのはフレッド殿下のおかげでしょう。さすがは呪われた王子だわ。恩を仇で返すとはこのことね」
彼女たちはフレッドの母方の祖父、ザワン公爵家に近しい家の者ばかりだ。フレッドとも親しくしていたのだろう。
(だからといって、王宮内でこんなに堂々と王太子殿下の陰口を言うなんて‥‥)
ディルの言う通りだった。ミモザの宮にいたプリシラはなにも知らなかったが、いま、王宮内には様々な憶測や噂話が飛び交っている。