次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
最悪の可能性が否定されて、プリシラはほっと安堵した。が、すぐにディルから厳しい言葉が飛んでくる。
「あくまで、自殺の可能性は低いってだけだ。残念ながら、生きている確証はない」
「そうか。そうよね‥‥王都警備隊を出し抜くなり抑えつけるなりの力のある第三者が犯人だった場合はーー」
「そうだ。生きてどこかに隠されているかもしれないし、すでに死体になっているかもしれない」
プリシラは思わず身震いした。もう二度とフレッドと生きて会うことは叶わないのかもしれない。そう思うと、やるせなかった。ひどく喉が渇いて、目の前のティーカップをつかんだ。
ディルも同じだったのだろうか。彼もまたカップのお茶を一気に飲み干した。
「話を整理しよう。いま説明したように、フレッド家出説は可能性としては低い。ただ、善意からリスクを承知でフレッドに協力した人間がいたのかもしれない。だとすれば、これが一番幸せな結末だろうな」
たしかにそうだ。フレッド自身の意思で王宮を出て行ったのなら、彼は被害者ではない。むしろ、目的を達成し、満足しているということになる。動機が不明すぎて釈然としない気もするが、生きていてくれるならそれが一番だ。
「次に、やっぱり犯人がいる場合。動機がある人間を疑うのは基本だが、もうひとつ‥‥」
「実行できるだけの力のある人物ね」
プリシラが続けた。自らの父親を疑わざるをえない一番の理由はこれだ。王都警備隊の目の届かないところに隠しているのか、もしくは金を使って黙らせているのか‥‥どちらにしても、それなりの財力や権力のある人間にしか不可能だろう。
「そう。このあたりを考えると、ロベルト公爵は怪しくなる。ふたつの条件を満たすからな」
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