能ある鷹は恋を知らない
部屋に入るとそのままベッドルームまで引っ張られ、いつもより乱暴にベッドの上に押し倒される。

「きゃっ…高島さん…っ」

両腕を片手で纏められると空いた手がボタンを外していく。

「あ、ねぇ…待って…っぁあっ」
「待てるわけないだろう」

ひやりとした冷たい手が身体を乱暴に開いていく。
性急に高められる身体はたとえ乱暴にされても触れられる喜びが勝り、拒めなかった。

「きみは男を舐めてるのか」
「そ、なこと…ん、やぁ…っ」

首筋や耳元にきつく吸い付かれ、至るところに所有印が刻み付けられていく。
噛みつくように触れる唇と獣のように熱を孕んだ瞳にまるでそのまま食べられそうな気分になる。

「芹香…っ」
「んん…ぁっ」

こんな高島さん見たことない。
怖いのに、嫌だって思えない。

「いっそのこときみを閉じ込めてしまいそうだ…」

頭上から落ちた彼の汗が私の肌と交ざる。
普段からは想像もできない余裕のない姿。
怒らせているはずなのにその必死な顔を見ていると胸が堪らなく疼いた。
見下ろされる度にぞくぞくとした快感が背筋を走る。

「はぁ…っん」
「芹香…」

もっと名前を呼んで。
もっと好きにして。
私はあなたのものだって感じさせて。

劣情のままに揺さぶられる身体に意識が遠退きそうになる。
漏れ出る声を押さえることもできず、しがみつくように広い背中を抱き締めた。

あなたが私を受け止めてくれるから、私も全てを受け止めたい。



「どうしてそんなに無防備なんだ」
「ん…」
「きみが相手だと抑えが効かない」

ダルくて動かせない身体に優しい手つきが髪を撫でる。

「ごめんなさい…だって、同級生にそんな風に思われるなんて…」
「きみは自分の魅力が分かっていない。自覚してくれ」

それは明らかに高島さんの欲目だと思うけど…。
でも、心配させてしまったのは事実だから。

「はい…心配かけてごめんなさい」
「知らない男にきみが触れられるのは我慢ならない」

そう言って高島さんはこめかみに触れるだけのキスを落とす。

「はい…」

甘く蕩けそうな声にキス。
疲労も相まって眠く閉じかける目を堪えて高島さんを見つめた。

「…私が触れて欲しいのは、高島さんだけです」
「芹香…」
「ん…ふふ、くすぐったい…」

優しいキスが顔中に落とされる。
引き寄せられると素肌同士がさらに密着して心地よい体温と温もりに幸せな気持ちが溢れだす。

「乱暴にして悪かった」

優しい手は私の輪郭をそっと確かめるように撫でていく。

「大丈夫です…高島さんにだったら何をされても」
「…煽るのはやめてくれ。これでも抑えているんだ」
「明日は…お休み?」
「…きみが動けなくなるぞ」
「ずっとベッドで過ごす休日も、たまには…いいかも」

高島さんがこうして優しくお世話してくれるなら。

「それは一日中抱いてもいいって意思表示だな」
「えっ!?それはちが…っん」
「もう遅い。俺は煽るなと言ったはずだ」

すぐに覆い被さってきた恋人はそう言った割には甘く優しいキスで私を翻弄した。
こんなキスをされては否応にも身体が熱を持ってしまう。

「いつも…ずるい…っ」
「きみに比べれば可愛いものだ」
「ぁ…っ」


こうして絡めとるような甘い口づけから、長い長い休日が始まろうとしていた。



-fin-

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